染めたばかりの色が、バンコクでは驚くほど早く抜けていく。そんな声を、neveでは日常的に耳にします。
日本にいた頃は1ヶ月以上持っていた色が、こちらでは2週間ほどで薄れてしまう。シャンプーの回数を減らしても、結果はほとんど変わりません。
その背景にあるのは、単純な「洗い流し」ではなく、髪の内部で起きている化学的な変化です。
色素は消えるのではなく、壊れている
ヘアカラーで髪に入った色素は、光を浴びると分子の中の構造が少しずつ壊れていきます。色素は「二重結合」と呼ばれる、鎖のようにつながった部分を持っていて、この鎖が光の力を受け続けると、途中でちぎれてしまいます。鎖が短くなると、その色素はもう色を保てなくなり、透明に近づいていきます。これが、いわゆる「日焼けで色が抜ける」の正体です。
neveの現場でも、アッシュ系を選んだお客様とブラウン系を選んだお客様では、2週間後の印象がはっきり分かれます。アッシュ系の色素は分子が大きく、髪の奥まで入り込めずに表面近くに留まりやすいため、光を真っ先に浴びる場所に色素があるぶん、赤みやブラウン系の色素より先に壊れてしまうのです。アッシュにしたのに数週間でオレンジっぽくなる、という悩みの裏には、こうした理由があります。
髪の電気的なバランスの乱れが、色落ちを加速させる
もう一つ、色落ちを加速させているのが、髪の電気的なバランスの乱れです。髪はもともと、プラスとマイナスの電気がちょうど釣り合った、安定した状態を保つ性質を持っています。この釣り合いが取れているとき、髪の内部はしっかり引き締まっていて、水を含みすぎることもありません。
ところが、カラー剤に含まれるアルカリと過酸化水素は、色を入れると同時に、髪の内部にある結びつき部分を酸化させます。この酸化によって生まれる物質が、髪をより強いマイナス電気の方向に傾けてしまい、髪はプラスとマイナスが釣り合う本来のバランスから外れ、常にマイナスに偏った状態になります。
このバランスの乱れは、蓋がきちんと閉まらなくなった容器のようなものです。容器そのものは壊れていなくても、蓋の閉まりが緩くなれば、中に入れたものは少し揺らすだけでこぼれ出てしまいます。バンコクの水道水は中性からやや弱アルカリ性で、この状態の髪にとっては、触れるだけで刺激になります。水に触れた髪は、マイナス電気の偏りによって内部の結びつきが反発し合い、キューティクルが開いて水を余分に吸い込みます。これを膨潤と呼びますが、髪が水を含んで膨らむと、内部の網目構造がゆるみ、そこに定着していたはずの色素が外へと押し出されてしまいます。
つまり、色落ちの正体は「洗いすぎ」ではなく、髪が水に触れるたびに、自らバランスを取ろうとして色素を手放している現象です。シャンプーの回数を減らしても改善しにくいのは、このためです。
neveの現場で見えてくる違い
在住1年以内のお客様と、3年を超えたお客様では、色落ちに関する相談の内容がまるで違います。1年以内の方は「色が抜けるスピード」そのものに驚くことが多く、3年目以降の方は「同じ色をどう保つか」という保ち方への相談に変わっていきます。バンコクの気候に髪が慣れるわけではなく、付き合い方が変わっていくというのが実際のところです。
neveの相談で最も多いのが、「色落ちが早いのは自分の髪が弱いから」という自己判断です。ですが実際には、光と水という、誰の髪にも平等に降りかかる環境の力が主な原因です。髪質の強さの問題ではなく、バンコクという環境と髪の化学的な状態の組み合わせで起きている現象です。
自宅で見直せること
シャワーの温度は、思っている以上に色持ちに影響します。熱いお湯は髪を余計に膨らませてしまうため、色素が流れ出やすくなります。ぬるめのお湯で洗い流すだけでも、差が出てきます。
外出する時間帯や日差しの当たり方も、髪にとっては小さな積み重ねです。強い日差しを長時間浴び続ける時間を減らすだけで、色素が受け取る光の量は変わってきます。
洗う頻度を極端に減らすよりも、髪に負担をかけない洗い方を続けることの方が、実際の色持ちには関わってきます。neveでも、洗い方や生活の中での小さな工夫についての相談を受けることが多く、髪質やカラーの種類によって適した内容は一人ひとり異なります。
美容室で確認できること
美容室を選ぶときに大切なのは、どのメニューが優れているかではなく、髪の状態に合わせて薬剤の強さや配合を調整できるかどうかです。同じカラーでも、髪の履歴やこれまでの施術内容によって、内部で起きる変化は一人ひとり違います。
neveでは、カラーやパーマなど薬剤を使う施術のあとに、髪に残留するアルカリや過酸化水素を専用の処理で取り除く工程を組み込んでいます。これは目に見える変化ではありませんが、髪の内部環境を施術のたびに整えることにつながり、1年後の髪の状態に差として表れてきます。
どんなカラーが自分の髪に合うか、どのくらいの頻度で確認していくのが良いかは、髪の状態を見ないと判断がつきません。気になる方は、LINEでの相談から始めてみてください。
色が抜けていく過程も、髪からのサインです
色が変化していく様子を、髪が発しているサインとして捉え直してみると、次にどんなケアを選べばいいのかが見えてきます。
バンコクで長く美容室を営んできて、共通して見えるのは、色落ちの早さに悩んでいた方ほど、髪の状態を定期的に確認する習慣に変わっていくということです。
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